ナランホによるエニアグラムと自己実現と精神医学のシステム

性格パターンと人間理解の極意

これまで、

エニアグラムというのは元々は、
性格タイプのものというより

人生、宇宙哲学の1つとして発展してきた

…と伝えてきました。

恐らくエニアグラムの概念を最初に
この世に表したグルジェフから始まり、

それを現代の私たちが認識する性格タイプ的な
要素を帯びるようになったのは、

1人が前回まで紹介した
イチャーソによるものでした。

彼の天才的な閃きによって
1950年台半ばに初めて、

膨大な資料からエニアグラムを図上に
適切に正しい順序で位置付けることに
成功したのです。

これで初めて様々な伝播の流れが1つになり、
性格タイプとしてのエニアグラムの
基本形ができました。

神秘主義から形を変える

そしてもう1つの流れが、

1970年、著名な精神科医である

クラウディオ・ナランホ
“Claudio Naranjo”

によるものです。

1970年代からアメリカで
エニアグラムが急速に広まっていった過程は、
彼の役割が大きかったのです。

彼は原始キリスト教の教えやイスラム教の
神秘主義スーフィーの教えを背景に持つ

グルジェフやイチャーソの
神秘主義的思想が色濃いエニアグラムに

もちろんそうした伝統に敬意を払いつつ、
当時、急速に発展した欧米の心理学や
精神医学的な見地を踏まえて、

エニアグラムにアプローチした人なのです。

彼は心理学の大きな流れとなった
「ヒューマンポテンシャルムーブメント」
の多くの思想家たちと共に、

イチャーソの元で学ぶために
チリのアリカ研究所に旅します。

ナランホはその頃、

北米アメリカ・カリフォルニア州の
ビッグサーにあるエサレン研究所で
ゲシュタルトセラピーの開発をしていました。
(ナランホ自身はチリ人です)

一方、南米でイチャーソは、
生徒の自己実現の手助けとなるべく

自分で計画した10ヶ月40日間の
集中プログラムを指導していましたが、

その彼が教えていたことの
最初の1つがエニアグラムでした。

エニアグラムと心理学の結びつき

エニアグラムの教えはたちまちその
グループの参加者の人々を魅了しました。

ナランホはこの時の参加者の一人です。

ナランホは、カルフォルニアに戻ると
自分が学んだ他の心理学的システムと共に
エニアグラムを教え始めたのです。

ナランホは、エニアグラムのタイプと
自分にとって馴染みのある精神医学の
分類との相関関係に興味を持ち、

イチャーソの簡単なタイプ説明を発展させます。

エニアグラムの有効性を
彼が示した1つの方法は、

特定のタイプないしは、
精神医学的に分類された人々を集め、

インタビューをし、類似性に焦点を当て、
さらなる情報を引き出すパネル方式でした。

例えば、ナランホは、グループの中で
強迫神経症的傾向を持つ人々を全て集め、

彼らの反応がどのようにタイプ1の説明に
当てはまるかといった具合に観察したのです。

こうした流れで、

エニアグラムは心理学の領域に移るのです。

カジュアルな心理分析ツール

こうして南米から超大国アメリカへと渡った
エニアグラムは1970年代の前半から
本格的に普及します。

こうして多くの人が知り、
活用するようになるわけですが、

そこには良かった面と悪かった面があります。

良かった面は、多様な分野に広まり、
活用の幅に多様性が生まれたこと。

どんなに優れた知恵でも埋もれたままでは
社会にインパクトはありません。

どんな形であれ、広まることは良いことです。

そのおかげで私たちも活用できるわけですから。

しかし悪かった面は、

グルジェフ、イチャーソの本来の思いと
そぐわない形で普及することになった点です。

例えば、

イチャーソはエニアグラムのタイプを
「自我の囚われ」(Ego Fixation)
という言葉を使っていました。

これはエニアグラム状の一点で動けなくなり、
特定のパターンから抜けられなくなる
固着と呼ばれる反応です。

エニアグラムの本質はこうした
固着からの解放にあります。

それがいつしか「性格」(パーソナリティ)
という言い方が主流となりました。

自我から解放され成長を導くためのツールから、

自我を認め自分を受け入れる自己容認
気軽な自己改善のツールとなった側面があります。

固着、ネガティブな面に注目するのでなく
気軽にポジティブな面に着目できる。

マーケティング手法としては、
至極当然のやり方かもしれません。

カウンセリング、社員教育、著書の普及など
1980年から90年代にかけて、「9つの性格」
としてエニアグラムが一般に普及します。

そのおかげで、多くの人たちが
カジュアルな性格分析ツールとして
エニアグラムを認識するようになります。

これはこのサイトのテーマで紹介している
もう1つの性格心理学の軸。

心理機能についても言えることです。

そもそもユングの難解でとっつきにくかった
心理機能という学問を

カジュアルな性格分析ツール
MBTIとして世に広めたのが、

イザベル・ブリックス、マイヤー・ブリックス

の2人です。
(そもそもMBTIは彼女たちの頭文字が由来)

性格分析としてのエニアグラムもMBTIも
うまく人の心を表す優れた分析ツールですから、

手軽で気軽に活用できる分、その背景にある
深い知恵を誤解してしまう恐れも生むのです。

世界へ広がるエニアグラム

この辺りの背景は知っておくべきです。

この辺りを知っているか否かで、
学ぶ姿勢、態度が変わってくるからです。

それでも、

エニアグラムの有用性は不変のものです。

情報化時代の現代は、

そうした古い知恵、先端の情報
組み合わせて活用する土壌があります。

そして、現在も世界中の研究者が
様々な心理学理論、タイプ理論、
心理的動機などの相関関係の研究を発展させ、

エニアグラムも様々な流派に分かれ、
一般に流通し、世の中に広まっています。

興味深いことに、エニアグラムのワークショップ、
セミナーは世界中で行われていますが、

どんな人種、年齢、性別、宗教的背景を超えて、

エニアグラムの普遍性、実用性が
認められているのです。

グルジェフ、イチャーソ、ナランホ…と、
これまで見てきましたが、

エニアグラムは古代の賢人の知恵を礎に、
現代心理学や精神医学の成果が
統合されたものなのです。

人間理解に極めて優れた示唆を与えます。

活かすも殺すも私たち次第です。

エニアグラムのシンプルな図形に、

私たちの内面のメカニズムが
体系的に表現されています。

これからの激動の時代にも貴重な教えなのです。

「自分を知る」ツールとして
どんどん活用して行きましょう。

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