前回まで紹介したのが、
人間らしさを司る新しい脳の代表的な
機能である言葉を操る役割ですが、
こうした言葉が頭の中で動けば動くほど、
生存を司る古い脳の働きに抑制がかかります。
こうしてみると、頭の中を言葉が
飛び交っている状態というのは、
それだけで我慢ストレスと
似たような状況になっていると
考えられますから、
心身に悪影響や弊害をもたらす
リスクが高まるのも理解できます。
それだけ古い脳が発する体の声である
「息苦しいよう~」という声が
抑え込まれることになるからです。
本当の自分の声を聞かず
刺激に触れ続けられていると、
こうした感覚はますます
麻痺していってしまいます。
こうした傾向は、テクノロジーや
インターネットが発達してから
ますます顕著になっているようです。
私自身健康マニア歴が20年ほど
になるのですが、
多くの人にインターネットや
携帯電話が爆発的に普及した
この10年あまりで、
こうした発展に伴い日本人の体と心も
大きく 変化してように感じます。
ストレスの脳と体への悪影響に気づかない?
こうした傾向を多くの
専門家が警鐘を鳴らしています。
ヨガ指導者の龍村修さんは
こう語ります。
「ヨガのクラスにやってくる人の
体を10年ほど前と比べたとき、
一番目立つ変化は、呼吸が
際立って浅くなったことです。
胸やお腹の筋肉が少ししか 動いていない。
あれでは肺の中の空気を十分に
入れ替えられないでしょうね」
こうした「呼吸が浅い」という指摘も、
以前紹介した昭和大学の
本間教授が語った、
「脳幹の呼吸中枢が抑えられる」
という現象と一致します。
酸素が不足したことを
感じにくくなれば、
浅い呼吸でも苦しくないのです。
でも勘違いしては行けないのが、
ただ感じにくくなっただけで、
呼吸の必要性が下がった
わけではないのです。
むしろ体の中は
「もっと呼吸を、酸素を!」
と叫び続けているのでしょうが、
その声が聞こえなくなってきているのです。
古い脳の叫び声を
新しい脳の耳に届かない…
新しいのはパソコンやスマホ
の刺激にとらわれてしまい
居着いてしまっているのです。
こうした気づかないストレスが
脳と体へ徐々に浸食することの
悪影響は無視できないものがあります。
テクノロジーが脳と体の疲労を増やす
自衛隊のメンタルヘルスを支える
心理カウンセラーの下園さんは、
こんな指摘をしています。
「疲労のパターンが、
以前とは変わってきました。
体はあまり動かさないのに、
パソコン作業などで頭ばかりが刺激され、
酷使されているのです。
そして頭に偏った疲労は、
疲れれば疲れるほど眠れなく
なってしまうのです。
肉体労働による疲れが
中心だった頃なら、
ある程度疲れた方が良く
眠れたのです。」
…
テクノロジーやインターネットの
ストレスの悪影響は日常のあらゆる
場面に出ているようです。
一般の会社などと比べた場合、
自衛隊という組織では、 今でも
肉体を使う業務がかなり多いはずです。
にもかかわらず「頭に偏った疲労」
が生じているというのです。
恐らく相当量の言葉が、頭の中で
飛び交っているのでしょう。
すると「眠い」とか「疲れた」という
体の声が遠のいてしまうのでしょう。
不眠症を始め気づかない心身の
バランスの崩れが起こりますが、
その原因にテクノロジーや
インターネットが関わっていることに
多くの人は気づきません。
コミュニケーションが脳を変える
私の知人のある診療内科医は
こう語ります。
「メールなどを介した
デジタル環境での対話が増えると、
心の中の感情的な動きが
不足しやすいと思います。
人間同士のリアルな対話では
言葉以外の部分、
例えば表情や身振り、 声のトーンなどを
介して喜びや怒り、 悲しみなどを
伝え合っているのですが、
メールばかりだとこういう
要素がほとんど入りません。
文字情報だけのやり取りでは
心の中の常道的な活動が
鈍ってしまうのでしょう。」
…
確かにメールやLINE、スカイプ
などは便利ですね。
テクノロジーの恩恵も受けている
訳ですが、
コミュニケーションの質を
大きく変えてしまいました。
こうした常道的な活動が鈍るという指摘は、
心身症の代表的症状である 「失感情症」
を思い起こさせます。
インターネットからのストレスで
脳と体へ悪影響があるとすれば、
こうしたメカニズムが働くのでしょう。
実際に、IT機器などのテクノロジーの
普及が失感情症を招く要因だと考える
専門家は多いです。
「コンピューターとばかり接していると、
物の考え方もコンピューター的な
デジタル思考にハマりがちです。
アナログ的な曖昧さの余地が少なくなり、
情緒的な心の活動も現れにくくなるのです。
そんな環境が、失感情症を生む原因に
なっているのではないでしょうか」
と、先ほどの心療内科の先生の話です。
確かにそうかもしれません。
こうした人体のメカニズムなどは
テクにロジーの発展がなければ
分からなかったのも事実です。
メリットももちろんありますが、
こうした矛盾も抱えているわけです。
私たち人類は過去に戻る訳には
いかないのです。
こうした時代の中でいかに
心身の健康を取り戻すか、
次回からこうした話を踏まえ、
世の中の動向に注目し、
現代社会が抱えているストレスの
根本構造について考えて行きましょう。


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